[Books] 「SEを極める」 vs. 「SEは死滅する」 (ja)

久々の書評です。今回は「SEのバイブル」とも言える「SEを極める」と、近年のSI業界の問題点をえぐり出した「SEは死滅する」を比較してみます。

1. 「SEを極める」はバイブル、しかし一部内容の陳腐化

長年IBMのシステム開発の現場にいらした馬場史郎さんの有名な著書、これからシステム開発に携わる若手技術者、そして若手を育てるマネージャーに対して、ご自身の長い現場経験から得た「鉄則」を伝授する内容です。

内容自体はもっともなことが多いのですが、昨今の動向にそぐわないものも多少散見されます。馬場さんは著書で技術偏重のSEに対して警鐘を鳴らし、SEは顧客業務をもっと知るべきだと主張しています。これは2000年問題前後まではまさに正論で、馬場さんの主張が広まったのか、2000年台前半の新人SEに対しては業務知識の習得に力点が置かれるようになりました。反面、技術習得はおろそかになり、「エンジニア」とは名ばかりの、正直「何にもできない人」が大量生産されるに至ってしまったのです。

2. 「SEは死滅する」は極論だが正論でもある

こちらは日経コンピュータの編集委員で、かつて編集長を務めたこともある木村岳史さんの著書。タイトルからして煽っていますが、内容はSI業界の問題点をストレートに指摘し、「○○しなければ未来はない」とさえ言い切っています。日経IT Proの連載記事を書籍化したものであるため、元の記事を読まれた方も多いのではないでしょうか?

こちらは「SEを極める」とは反対に、SEの技術力低下が顕著になってきた頃からの話であり、元の記事は現在も連載中のため、近年のトレンドも多く盛り込まれています。木村さんの主張のひとつに、グローバル化(=米国風の流儀)により日本のシステム開発だけが世界から取り残され「ガラパゴス」状態になっていることが挙げられます。つまり、日本の常識は世界の非常識、しかし日本人はそれに気付かないということです。SIerに勤務する身としては耳の痛い話ばかりですが、極論とは言えその主張は正論でもあるので、なるほどと頷ける話題も多くあります。

3. 2つの「SE本」の違いは、書かれたときの時代背景の違いである

今回ご紹介した「SE本」はいずれも読む価値のある書籍ですが、主張に相反する点が見られます。その違いは時代背景の違い、それもほんの数年~10年程度です。IT業界の動きはそれだけ速いものだということを、改めて感じさせてくれます。